テニスのフレンチオープンは昨日のメンズ・シングルスのファイナルで幕を閉じた。ナダルがソダーリングを6-4 6-2 6-4のストレートで下した決勝はスコア以上に見応えのあるゲームだった。昨年から続く不調を払拭したナダルのパフォーマンスは圧巻の一言。ソダーリングは昨年のフェデラーとの決勝の経験からか、自分を見失わず、彼らしいテニスを展開。ナダルから得た8回のブレークポイントがそれを物語っている。ただ、そのすべてをナダルは跳ね返した。そして、それがソダーリングのメンタルにじわじわと効いて、ミスが増えていく。対照的にナダルは自信を持ってプレーに集中していく姿が印象的だった。試合が終わって、極度の集中から解放されたナダルの涙。その姿を見て、この1年の彼の苦悩の深さが想像できた。
女子の決勝はある意味、男子よりも興味深いゲームだった。スキアボーネとストーサー、戦前の予想ではストーサーのハードショットがスキアボーネを圧倒するという意見が多く、僕もそう思っていた。ふたりのこのゲームに対する考え方や戦略が同レベルなら、そういう結果になっただろう。ただ、そうはならずスキアボーネがストレートでストーサーを破った。このゲームを観ながら、僕が思い出していたのは、アガシ、そしてロディックのコーチだった、ブラット・ギルバートの著書、「Winning Ugly」だ。これはギルバート自身が選手生活から得たゲームに勝つための考え方を紹介している。その中に出てくる象徴的な言葉がある「コートの上で誰が誰に対して何をしているのか」これを冷静に判断し、戦略を考えれば、ゲームに勝つ可能性が高くなるというものだ。
スキアボーネは戦前から、そのことを充分に考えて試合に臨み、それを自信を持ってアグレッシブに実行したのだろう(もしかして、スキアボーネはこの本を読んでいた!?と思ったりもした)。自身のサービスをブレークされることもあったが動揺することはなかった。驚くべきことは、スキアボーネがツアー・コーチを帯同していないことだ。理由は自分で考えながら、戦いたいということらしい。ギルバートはゲーム中のコーチングを解禁すべきだと著書の中で言っていたが、この日のスキアボーネにそれは必要なかった。逆にストーサーは途中でコーチの助言が欲しかっただろう。
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